2月の下旬頃に画像の右側にあるように突然、突起物のようなものができてしまいました。



遠方から失礼いたします。
2月の下旬頃に画像の右側にあるように突然、突起物のようなものができてしまいました。最初は水ぶくれのようなものでしたが、潰れたのか現在の様なものになりました。痛みとかはないのですが、気になるので相談させていただきました。その上で最寄りの病院に受診しようと思うのですが、アドバイスを下さい。


A.こんにちは、安原歯科医院の安原豊人です。
写真拝見いたしました。舌下型がま腫の疑いがあります。がま腫は、舌下腺由来の粘液嚢胞で、唾液がたまっています。
口底部に片側性に現れ、やや青紫色を帯びた透明感のある貯留嚢胞です。表面の粘膜は薄く、ガマの咽頭嚢に似ているのでこの名があります。唾液の流出障害により生じるもので、導管の一部が外傷などにより損傷し、周囲組織中に唾液が漏出してできると考えられています。
粘液嚢胞は幼児から老人にいたるまで広く認められ、性差も少ないものですが、ガマ腫は10~30歳台の女子に多いとされています。無痛性で、波動を触知する単房性の軟らかい膨隆として認められ、楕円形のものが多く、圧迫されて薄くなった粘膜を通して青紫色の嚢胞が透けて見えます。大きく増大すると、舌を挙上し、言語障害や嚥下障害を起こすこともあります。内溶液は透明粘稠な粘液性物質で、自壊すると膨隆は消失しますが、短期間に再発します。
がま腫の多くは、顎舌骨筋の上方に限局した形で出現し、口底舌下部に腫脹を呈します。これを舌下型ガマ腫と呼びます。
顎舌骨筋を超えて顎下部に膨隆を生じたものを顎下型がま腫と呼びます。また、口底部と顎下部の両方に膨隆したものを舌下顎下型がま腫と呼びます。
治療法には、
①嚢胞全摘出術(嚢胞壁はたいへん薄いので、壁を破らないように全摘出するには忍耐と熟練を必要とします。)
②開窓術(頻繁に行われる方法で、嚢胞壁の上半分を切除して大きく開窓し、残りの嚢胞壁を口腔粘膜の一部とする方法です。開放部分が閉鎖して再度唾液が貯留しないように、開窓した嚢胞壁の辺縁を口腔粘膜と縫合して口腔内に開放しておく必要があります。)
③舌下腺体を含めた嚢胞全摘出術(何度も再発を繰り返す症例には、舌下腺体を含めて嚢胞の摘出をはかることがあります。 特に開窓術が困難な顎下型ガマ腫には、舌下腺体の摘出を同時に行ったほうが良いといわれています。)
がま腫は全摘出術、開窓術などを行っても再発を繰り返す例がみられるので、経過観察が必要です。再発が疑われたら、巨大化するまで放置しないで、すみやかに適切な時期に処置をすることをお勧めいたします。
大きさにもよりますが、不随意に嚥下反射などで動きやすい部分ですので、神経、血管などを傷つけるリスクが少しでも減る様に、全身麻酔下での手術を勧められることが多いものです。
当院では、がま腫の手術以外の治療法として、OK-432嚢胞内注入療法を行っています。OK-432 (ピシバニール)という薬剤を注入する方法です。この薬は元々、免疫力を 高める薬ですが、組織に炎症反応を起こさせて、腫れを収縮させる作用があることか ら、がま腫の治療などに応用されています。
副作用として、発熱などがみられることがあります。局所麻酔で行われることが多いものです。大きさによっては、2,3回行うことが必要になりますが、注射針でたまっている唾液を抜き、代わりにこの薬を薄めた液を同量注入します。
通常ガマ腫に関しては、健康保険はききませんが、耳鼻科では保険がきくところもあるようです。
http://homepage3.nifty.com/fukase/OK-432/index.html をご参考にされると良いでしょう。

口腔外科専門医 安原豊人

口腔外科専門医 安原豊人

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